ほんとに強い馬はまわりに左右されることがない。
あるときは逃げてためてそこから突き放して勝つ。
いつも馬なりでもそれなりに前のポジションがとれて、そこから他の馬を上回る脚を使って完封する。
流れに左右されない馬は自分で競馬を作れるし、まわりがどんな動きをしようと立ち回れる位置にポジションすることができる。
そして前に馬がいればその馬をしっかり捉え、後ろからくる馬を完封することができる。
イクイノックスという馬が完成形をみつけたのが今年に入ってから。
ドバイシーマクラシックでヒントをつかんで、天皇賞(秋) ジャパンカップでついに完成形を掴んでしまったのではないかくらいの完璧な強いレースをしてしまった。
東京スポーツ杯2歳ステークスのころは馬の能力だけで勝っていた。
長期の休み明けでクラシックに臨んだ皐月賞は、大外枠で久々と小回りの中山を意識してルメール騎手がはやめに抜け出しをはかったところを後ろから差された感じで、はや仕掛けと休み明けが響いて能力だけで持ってきた2着。
ダービーはまたもや大外枠で、まだ体質的にも盤石ではなくゆっくり出てなるべく距離をロスしないように後ろを走って内に入ってあがってきた分外に出すのが遅くなった分スムーズに外に出したドウデュースを捉えれず屈した2着。
この時点でも能力はけた違いのものがあると伝わっていたが、皐月賞、ダービーといったクラシックで惜敗になってしまった。
春にクラシックがとれなかったイクイノックスは菊花賞ではなく、古馬が待つ天皇賞・秋に挑む。
2022年天皇賞・秋はパンサラッサの大逃げ。
イクイノックス自体は最後の末脚こそ異次元で走っているが、道中はそれほどいってはいなかった。
有馬記念では勝負どころではあがっていってスムーズに先頭に立っている。
それでも中団やや後ろ目からの進出といったレース。
折り合いなどの絡みで、後ろから競馬して最後異次元の末脚で他馬をねじ伏せるタイプの馬の完成形を目指すのかと思われた。
ドバイはスタートしてからスピードの違いで自然と前にポジションをとり、そのまままわってきてそこから軽い合図だけで自慢の末脚で逃げて突き放す競馬をみせる。
4歳になったイクイノックスが逃げや先行できるスピードの絶対値と、どのポジションでも折り合う気性、そしてそこで脚をためてムチなどなくともゴールが近づくコーナー抜ければ加速してくるという馬が競馬を知って自ら首を使ってピッチをあげ加速するから騎手がムチすら必要なくなるという片鱗をみせた。
宝塚ではイクイノックス自体の調子はさほど良くなかったのか、先行力がなく後ろからの競馬になったが、馬自体の能力は間違いないものがあったので、騎手も距離をロスしても大外を走らせるとロスに関係なく前の馬をしっかり大外からかわしにいく。
抜けた後内からスルーセブンシーズの急伸にあうが抑えただろう力の差のある勝ち方だった。
そして夏を越えたイクイノックスが直接天皇賞・秋に出てきたのは叩きなくとも格好はつく走りができる、負けないという表れであろう。
陣営はジャパンカップが目指すところ、当然天皇賞・秋でも負けないという自信。
前年の天皇賞・秋で中途半端な競馬をしたジャックドールはそのリベンジの果敢な逃げ、その後ろをキタサンブラック産駒のガイアフォース。
春に短距離路線を走ってきたガイアフォースがジャックドールに鈴をつけるカタチになってそのガイアフォースにイクイノックスがつける。
イクイノックスの先行力のスピードが前の2頭をよどみないはやいペースにし、イクイノックスをマークする馬はなし崩しに脚をつかわされ、逃げた馬、ついてきた馬の脚をあげる展開に。そして後ろも完封して、異次元のレコード。
つまりイクイノックス自身は自分のペースで無理ない先行をして、そこから後ろを追いつかせない。
それでレコード。
逃げてはいないが、マイペースに持っていってそこからしっかり脚を使う。
父キタサンブラックは逃げてマイペースでそこからしっかり脚を使う、後ろから並ばれてもそこから勝負根性で盛り返して差しかえすなどの競馬が強いなと感じたが、イクイノックスがスピードもあって、スタミナもあって、さらに折り合えばどこからでもきちんと最後も伸びてくる脚を使える馬っていうのはわかっていたが、ジャパンカップでほんとに異次元だという強さをみせた。
パンサラッサは逃げた。でも関係ない。
タイトルホルダーは押してポジションをとりにきた。
そんなのはイクイノックスには関係ない。
自分のスタートを切って馬なりに馬と騎手が考えるポジションにスッと落ち着く。それが3番手。
リバティアイランドとスターズオンアースはイクイノックスに競りにいくこともなくそのすぐ後ろのポジションをとる。
ドウデュースはその2頭の後ろにポジションを取らざるを得なくドウデュースまでは後ろからの絡みや仕掛けがあっても、その前はタイトルホルダー・イクイノックス・そしてリバティアイランドとスターズオンアースという平均ペースでのレースが流れる。
この状態で硬直した時点でイクイノックスの強さしか目立たないレースになってしまった。
パンサラッサが逃げて盛り上げたが、しまい35秒のタイトルホルダーはイクイノックスに抵抗すらできなくなった。
リバティアイランドとスターズオンアースも枠なりに仕方なかったが、先行させられた分脚が鈍り牝馬の一瞬切れる脚も使えず、斤量の差を生かせない。
道中内々を外からせりかけられるカタチで走ったドウデュースも楽な競馬ではない中一瞬らしさはみせるがリバティアイランドとスターズオンアースと脚色が同じになってかわせない。
リバティアイランド33秒9とスターズオンアース34秒0。ドウデュース33秒7末脚をつかっていてもイクイノックス33秒5という末脚をみれば、とったポジションの差がそのまま着差に繋がっている。
イクイノックス自身はほぼノーステッキに近いみせムチ程度の肩へのステッキで軽く集中させた程度。
タイトルホルダーのミドルペースの逃げをマイペースで突いて直線はパンサラッサが目標になって軽いゴーサインでもイクイノックス自身が走り続けた結果の圧勝。
無理なく先行してそのままスピードの持続力の違いで圧勝という競馬。
しっかり首を使ってピッチをあげていく身体の柔らかさと、回転力に長い手足に長い胴でしっかりした跳びと回転力。
馬自体が競馬を知っているというのが強い。
そして鞍上もリーディングで馬を気持ちよく走らせるルメール騎手。
ただ強いんじゃなくそこに成長があるっていうのが強い。
だからこの馬に勝てないんじゃないかと誰もが思ってしまう強さ。
どんな競馬をしてもそれなりにレースにしてしまうほど、馬がレースを知っていてそれで扱いやすい。
だからルメール騎手がポニーと表現したのだろう。
もはや勝ったことが嬉しいという概念をこえつつあるのかもしれない。
騎手にとってこんな馬に巡り合えたことが奇跡なんだろう。
まだ4歳。
クラブ競走馬だからこそ選択が簡単ではないと思う。
引退はいつ、目指すレースはなに。
夢よりも実をとらざるを得ない中、無事次の役目へのバトンタッチすることも求められる。
強いがゆえに悩むことが多いイクイノックスに関わる全ての関係者なのかなと思う。
画像など引用させていただきました
イクイノックス
[牡4・青鹿毛]
父:キタサンブラック
母:シャトーブランシュ
戦績 10戦8勝
2021年 東京スポーツ杯2歳ステークス(GⅡ)
2022年 天皇賞(秋)(GⅠ)
2022年 有馬記念(GⅠ)
2023年 ドバイシーマクラシック(G1)(ドバイ)
2023年 宝塚記念(GⅠ)
2023年 天皇賞(秋)(GⅠ)
2023年 ジャパンカップ(GⅠ)
引用元
JRA 日本中央競馬会 HPから写真を引用させてもらっています。