日本グランプリシリーズ グレード2・第32回金栗記念選抜陸上中長距離大会2024が開催され、日本の中距離のトップランナーたちも数多く出場していました。
そのなかでもひときわ存在感を放つ世界と戦う田中希実選手が出場しており、そこに2人の高校生が同じ組にエントリーされるということで注目が集まりました。
800mのインターハイチャンピオンの久保凛選手と、都道府県対抗女子駅伝などの走りで注目を集めるドルーリー朱瑛里選手の高校2年生の2人でした。
久保凛選手とドルーリー朱瑛里選手は中学3年のころから800mや1500mで世代トップを争うライバル的存在でもあると思いますが、中距離で実績のある東大阪大敬愛高校に入ってさらに飛躍した久保凛選手と、地元進学を選んで津山高校に進学したドルーリー朱瑛里選手で逆転も起こったシーズンだったと思います。
どちらも800mや1500mで高校生のトップクラスであることは証明した1年でしたが、久保凛選手もインターハイ王者のあと駅伝シーズンに手術などでレース見送りがあったり、ドルーリー朱瑛里選手も存在感は示したが本人が納得いける成長曲線だったかというと納得いってない部分もきっとあったでしょう。
そんな高校2年生の選手二人が田中希実選手という日本トップの選手に挑戦する機会となったので注目を集めました。
800mで久保凛選手が、1500mでドルーリー朱瑛里選手が田中希実選手と同じ組でエントリーされました。
800mで久保凛選手と田中希実選手は隣のレーンでのスタートになりましたが、勢い良くスタートした久保凛選手と、いつもののようにゆっくりスタートした田中希実選手で好対照でした。
トップ選手の中でまず先頭を奪う久保凛選手。一人10mほど遅れてそこから前の一団を追いはじめる田中希実選手。
300mを通過したあたりで集団最後方にとりついて、直線でストライドを伸ばし、ラスト400mで3番手の外で第1コーナーを一番大外で走っていく田中希実選手。
先頭走る久保凛選手を2コーナで捉え裏の直線で先頭に立ちます。
第3コーナーから加速する田中希実選手に2番手の位置から差がなく追走する久保凛選手。
スムーズに加速する田中希実選手を4コーナー外に出て追走し、残り60m付近から並んでストライドを伸ばして抜いて引き離す久保凛選手が2分05秒35で1着。
田中希実選手は園田学園女子大学の渡辺愛選手らの追走を退けて、2分06秒08で2着となりました。
田中希実選手にとって勝負という感じではなく、2時間後に控えた1500mのレースも見据えた部分もあり、最後まで自分のペースで押し切る感じだった感じで、久保凛選手らの力を確認する意味あいもあったようにもみえました。
田中希実選手にとって久保凛選手は刺激ある存在になる選手と感じたと思います。
久保凛選手は最初から先頭にでるスピードと強いメンタルを持った選手で、足が長くストライドも大きく、フィジカルもしっかりしているので、最後のスパートもかなりあげることができる選手です。
そういう意味では勝負強さもあります
駅伝などで距離もこなしているので、スタミナもついているのは間違いないのでまだまだ記録をあげていける選手です。
フィジカルがしっかりしてきているので、さらに強くなっていくことを期待したいと思います。世代をこえたトップクラスで世界を意識して走ってもらいたい選手です。
田中希実選手もラストのスピートやメンタルは意識せざるを得ない存在になると感じたでしょう。
それでも800mと1500mを走る田中希実選手はまだ全力でないのはたしかで、800mは様子見の最後方からの実力をはかる様子見でした。
最後も競り合うつもりはなかったようにみえました。
8割ほどの力や体調で退けるのは厳しい選手と認識できたかもしれません。
田中希実選手はその2時間半後には次のレースが待っていました。
そこで挑むのがドルーリー朱瑛里選手でした。
田中希実選手は1本走って疲れもあるとは思いますが、身体もほぐれてるという感じ。
ドルーリー朱瑛里選手は他のトップ選手に混ざってスタートから先行します。
田中希実選手も800mとは異なり、序盤から番手をとりに先行してレースを進めます。
田中希実選手をみるように3番手で残り3周に入っていくドルーリー朱瑛里選手。
ここから田中希実選手がペースアップして先頭に動く流れになるとレースは動きはじめ、外から外から他の選手が前に動いていきます。
内に閉じ込められたドルーリー朱瑛里選手は6番手に下がってしまい、そこから前を追って脚を使ってコーナーの外から5番手を狙ってあがっていきますが、卜部蘭選手らにポジションを奪い返されてしまいます。
そのあたりで脚を使ってしまってドルーリー朱瑛里選手は厳しくなってしまいました。
田中希美選手は最後まで先頭争いをして2着でゴール。
ドルーリー朱瑛里選手は力尽きてなんとか9着でゴールというカタチになりました。
1500mは800m以上に駆け引きが大きくなります。
1500mの日本トップ選手の駆け引きは高校生レベルからは大きくあがっていきます。
ドルーリー朱瑛里選手の力が出し切れたわけでもなく、ペースと駆け引きで力をつかわされたという印象です。
ただはやければ良いわけでもなく、高校生ではなかなか味わえない駆け引きがトップクラスの集まった先頭集団ではあります。
ドルーリー朱瑛里選手がこの経験を積みながら、さらにスピードもタイムもあげていかなければそこのレベルと争うことはできません。
ドルーリー朱瑛里選手のフィジカルからみても、他の選手と比べると身長が低い方なのでストライドとピッチをさらにあげていく必要があります。
ドルーリー朱瑛里選手に求められるものは今は慌てないことかもしれません。
まずはケガをしないでこれからも練習やレースに出て経験を積むことや力をつけることです。
間違いなく輝く素質がある選手であるのは間違いないので今の結果にこだわる必要がないとも思えます。
むしろフィジカルが安定してくれば、きちんと練習が積んでいければさらなる進化があると思うので、その時期を待つくらいの余裕を持つと良い結果が将来的に期待できそうです。
ドルーリー朱瑛里選手の良さはメンタルです。
一流になる選手が持っているメンタルを持っています。
田中希実選手も大きくない選手ですが、今日本のトップの選手です。
高校時代とかも常にトップのトップというわけではなかったわけで、ただそこで慌てずに将来を見据えて努力し続けたから、フィジカルとのバランスが整ってきた後日本トップで世界にも挑戦できる強さを身につけたわけです。
ドルーリー朱瑛里選手も田中希実選手のようになれるし、それをこえていける可能性も秘めています。
なので今フィジカルもメンタルも壊さないことが求められます。
適距離を広げていきながら競技を楽しむことが大事で、そこからみえてくるものがきっとあるはずです。
ドルーリー朱瑛里選手は今の1500mや800mなどでも勝負していきながら、適距離を広げていくことで、さらに強くなっていけると感じます。
オリンピックレベルで考えれば1500mから5000mや10000mといった競技の方が今のフィジカルならば勝負していける分野になっていくと感じます。
それくらいフォームが整っています。
フィジカルが整ってきた久保凛選手と、フィジカル的に様子見な時期にもみえるドルーリー朱瑛里選手。
同じ高校2年生だけど、体格も成長も違うのでフィジカルと成長に合わせた練習やレースなどの経験を積んでいくことが、大きな成長に繋がるように感じました。
結果も大事ですが、それ以上に逸材とも呼べる選手たちで、ともに強いメンタルを持った選手なので、ケガしないことや適切な負荷をかけることでそれぞれの成長曲線で成長して欲しいです。
久保凛選手もドルーリー朱瑛里選手も高校生がピークの選手ではないし、その先を意識して高い目標を掲げて挑んでいる選手なので大学生や社会人になってから日本トップの選手として長く君臨するような選手を目指して世界に挑戦する選手になって欲しいです。
楽しみに応援していきたいと思います。
引用元
日本陸上競技連盟公式サイト - Japan Association of Athletics Federations
JAAF 日本陸上競技連盟公式サイト HPから写真を引用させてもらっています。